従業員が自分でエクセルに出退勤時刻を入力する問題

前回の記事では、紙のタイムカードからエクセルに転記する場合のリスクを解説しました。

お読みいただいた方より、こんなご質問をいただきました。

「転記するときに間違いが起きるなら、はじめから従業員に出退勤打刻をエクセルに入力させればよいのでは?」

なるほど、それだと転記する必要はないですね。実際に計算式が組まれたフォーマットが配布または販売されています。それを共有ドライブに入れておいて、従業員が自分で出退勤時刻を入れれば事業主様や管理職の方はとても楽になります。

しかし、出退勤をエクセルに従業員が直接入力することには重大なデメリットがあります。

客観性が保てない

従業員が自分で入力すると、それは自己申告ですから、客観性がある記録とは言い切れません。言い換えると、ごまかしが効くということです。常に上長が従業員の出退勤時刻を目視確認できればいいのですが、現実的ではないでしょう。

中には、残業代欲しさに、長い時間残業していたかのように実際の退勤より遅い時刻を入力するといった例もあるようです。また逆に、遅刻して来たにも関わらず、始業時刻前の時刻を入力することも、やろうと思えばできてしまいます。アクセスログをチェックすれば見破れるかもしれませんが、そこまでする時間と手間をかけることは大変です。

同時に開くと競合が生じる

同じファイルを共有していたとしたら、同時に開くと競合となります。先に開いた人が閉じるまで待っていなくてはならないなど、非効率が生じます。競合ファイルができてしまうと、どちらか正であるかの確認も面倒になります。

法改正に対応するのが難しい

勤怠管理の法改正の例を一つ、お伝えします。

令和5年4月より、中小企業においても、月60時間を超える法定外残業の割増率が×1.25から×1.50になりました(大企業には既に適用済みでしたが、中小企業への猶予が令和5年3月末をもって終了しました)。

なので、月60時間超えの法定外残業があるなら、その時間を分けて集計しなければなりません。そうでないと賃金未払いとなります。

エクセルで勤怠管理をしている場合には、こういった法改正や制度改正には、事業主様や管理職の方がご自身で表計算を加筆修正いただくか、あるいは、対応済みの計算表をダウンロードして設定し直すかしていただく必要があります。

このような法改正があると、新しい制度への理解とITスキルが求められますので、難しい対応が必要になります。

労働基準監督署に認めてもらえないことがある

エクセルによる勤怠管理は、いつでも事業主や管理職の方が入力・修正・追記をやろうと思えばできます。意図的に事実と異なる変更をしたと判断されれば、改ざんとなります。エクセルでは、改ざんされれば元のデータは分かりません。

そのため、労働基準監督署の調査が入った時には、エクセルの勤怠管理簿は客観的な労働時間の記録とは認めてもらえないおそれがあります。

【勤怠管理システムの導入で問題解消!】

エクセルでの勤怠管理にはこのよ   うな問題やリスクがあります。しかし、勤怠管理システムを導入することで大きく改善できます!

〇客観性のある正しい打刻ができます。ICカードやGPS機能を使った打刻も可能です。

〇法改正や制度改正があっても、システムベンダーが対応してくれます。設定の変更が必要なこともありますが、ベンダーに問い合わせて対応するか、設定を扱っている社会保険労務士が対応できます。

〇労働基準監督署にも、客観的な勤怠記録として認められます。

勤怠管理システムのデメリットは、初期設定に労働法規の知識が必要となること、そして時間や手間が必要になることです。

LEO社会保険労務士オフィスでは、社会保険労務士の専門知識を持って、勤怠管理システム設定業務を行っております。

労務顧問契約がなくても、勤怠管理システム設定業務だけのご依頼も承ります。お問い合わせをお待ちしております。

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