タイムカードをエクセルで集計するリスク
先日は紙のタイムカードの打刻ミスが引き起こす問題についてお伝えいたしました。また、打刻をエクセルに転記するときにミスが起きやすいことも述べました。
今回はエクセルで集計をしたときに発生しやすいリスクについて、もう少し詳しく述べていきたいと思います。
膨大な数のセルに入力する必要があります。
休憩入り/休憩戻りの打刻もすれば、出勤/退勤と合わせて、一人一日4回打刻します。常勤の人が月に20日出勤したら、月に80回打刻します。従業員が10人いたら、エクセルに1か月でなんと800回も入力することになります。
これを一つも間違うなと言うほうが無理です。紙のタイムカードをエクセルで転記すると、ミスが起きて当たり前と考えてよいでしょう。
実働時間を合計すればよいわけではありません。
労働時間には種類があります。
出勤から退勤までの時間から、休憩時間を引いただけの実働時間だけを算出すればよいわけではありません。↓の画像のような単純な集計になっていませんか?
1日7時間勤務の月給制の従業員を例に、労働時間の種類をいくつか簡単に説明します。
労働基準法で労働時間は原則として1日8時間、週40時間と定められております。
所定内労働時間:雇用契約で決まった1日7時間の労働時間です。
所定外労働時間:7時間を超え、8時間以内の労働時間です。
法定外労働時間:8時間を超えた労働時間です。
深夜労働時間:午後10時~午前5時の間にある労働時間です。
なぜこんな種類があるのかと言うと、残業代を支給する時間になるのかどうか、割増賃金の対象になるのかどうかといった、給与計算での違いがあるからです。(※給与計算の決まりは別の記事でお伝えします)
上記はあくまで一例です。労働時間の種類(項目)はもっとたくさんあります。また、就業規則や雇用契約書によって扱い方が異なります。
労働時間の種類を分けて集計して給与計算に対応させなければ、残業代不払いに直結します。賃金未払いとなるので当然、従業員とのトラブルの原因になります。労働基準監督署の調査が入れば指摘を受けることになります。
テンプレートを使う際のリスク
エクセルでの労働時間集計は、上記のように複雑な表計算が必要になります。なので、計算式が組まれたテンプレートが配布または販売されています。
しかし、市販のテンプレートは貴事業所のために作られているわけではありません。事業所の就業規則や雇用契約に応じて、適宜カスタマイズすることになります。
始業時刻、終業時刻、休憩時間、終業時間帯、休日の曜日…等々、事業所によって千差万別です。また、同じ事業所でも従業員毎に就業ルールが異なることもあります。
これらを一つ一つ設定をする必要がありますが、その際に間違いがあると、当然計算結果も間違ったものになります。
計算式の間違いが起きるリスク
ミスが起きるのは、数値の入力時だけではありません。
エクセルの計算式が間違っていると、正しい集計結果が得られません。
例として、この計算表をご覧ください。
3月31日の打刻は41行目ですが、計算式を見ると39行目までしか合計されていません。つまり、40行目(3月30日)の15分間と、41行目(3月31日)の25分間はこの月の時間外労働に含まれていません。正しくは3月の時間外労働は5時間45分なのに、5時間05分と誤った集計になってしまっています。
エクセルで行の挿入、削除など何らかの操作により、いつの間にか計算範囲がずれていたらこうなります。
集計の計算式が間違っていることに気付かずに、そのまま給与計算に反映すると、賃金未払いとなります。
エクセルで変形労働時間制に対応するのはとても難しい
上記では、毎日の労働時間が決まっている固定勤務制を前提にお伝えしました。しかし、日々労働時間が変動する変形労働時間制を導入している事業所もあります。
フレックスタイム制、裁量労働制、1か月単位変形労働時間制、1年単位変形労働時間制といった働き方があります(この解説は別記事にします)。
変形労働時間制の場合、エクセルの表計算で労働時間を項目別に集計することは非常に難易度が高いです。膨大な時間と手間がかかります。
変形労働時間制にしたほうがいい事業所であっても、勤怠管理がネックとなって移行できないケースもあると聞きます。勤怠管理が事業の発展の妨げになっているとしたら、たいへん残念なことです。
最近では、Chat GPTで紙のタイムカードをスキャンすれば集計してくれる機能があるようです。しかし、それは打刻が完璧にそろっていることが前提となりますし、どこまでの集計ができるかは未知数です。
勤怠管理システムの導入で解決できます!
転記ミス、労働時間の項目別集計、テンプレートを使うリスク、計算式の間違い、変形労働時間制への対応の難しさ…エクセルでの勤怠管理にはこのような難点があります。
しかし、これらの問題は勤怠管理システムを導入することで解決できます!
- システムに記録された打刻により集計しますので、手入力の手間がほとんどなくなります。
- システムの設定をすれば、項目別に労働時間を自動集計できます。
- システムが集計してくれますので、計算式を組んだりする必要はありません。
- ほとんどのシステムは変形労働時間制にも対応しています。
紙のタイムカードをエクセルに転記する作業には生産性はありません。仮に完璧にできたとしても、それにより事業所の利益が上がることはありません。
勤怠管理システムを導入することにより、事業主様の時間と手間を大幅に削減し、リスクを低減して、その分の時間とお知恵を利益向上に使っていただくことをお勧めします。
勤怠管理システム導入の課題は初期設定に労務知識が必要だったり、設定項目が多いことです。
代わりにやってほしいとのご要望にお応えして、LEO社会保険労務士オフィスは勤怠管理システム設定業務を行っております。
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