外国人優遇?-労働保険編-
今夏の参議院議員選挙では、外国人をめぐる政策のあり方がにわかに問われることとなりました。
外国人労働者や外国人住民の権利の制限を主張する政党が、SNSや動画サイトを通じて、一部の層からの支持を得ました。
この政党は、選挙期間中に「外国人が優遇されている。」としきりに喧伝していました。
しかし、本当にそうなのでしょうか?
今回は、労働保険の面からお伝えいたします。
事実、人手不足です。
事実は一つ、しかし、それに対する解釈は無数にある、と言われます。
「日本で必要な労働力は日本人だけでは全く足りない。」
-これは事実です。
社会保険労務士として、いろんな業種の経営者の方々とお話をする機会があります。
特に、建設業、運送業、農林水産業といった、体力が必要とされる業種においては、経営者の方は口をそろえて「なかなか日本人の採用はできない」と危機感を感じていらっしゃいます。
また、東京などの大都市部よりも地方のほうが深刻です。
外国人労働者が増えることは是非もないことであり、当然に労働保険に加入する外国人労働者も増えることになります。
労働保険には人種や国籍による差はありません。
労働保険は労災保険と雇用保険の総称です。
労災保険は、親族ではない人を雇用すると、必ず加入することになります。初めて人を雇用した事業所は、労働基準監督署に届出をします。労働時間に関わらず、自動的に加入するので、労働者自身が労災保険に加入する手続きはありません。
雇用保険は、原則として週に20時間以上勤務する労働者が加入します。こちらは該当する労働者について、ハローワークに雇用保険資格取得届を提出します。
労災保険も雇用保険も、労働者の人種や国籍による差はありません。日本人であれば加入するが、外国人は加入しなくてよい、といったことは全くありません。
労働者の人種や国籍に関わらず、労災保険料は給与額に応じて、事業主が全額を納付します。雇用保険は一部、労働者負担がありますが、それは日本人でも外国人でも同じです。
雇用保険の資格取得時に、外国人の場合は、在留資格の種別や、在留カード番号を記載して届出をします。しかし、これは雇用管理上、必要かつ合理的な範囲を超えません。
保険給付にも差はありません。
労災病院を訪れてみると、もしかすると外国人の方をしばしば見かけるかもしれません。しかし、これは、建設業などケガを負う可能性が高い業種に多くの外国人労働者が従事しているからです。
オフィスワークと現場作業では、労災事故の発生率は大きく異なります。外国人労働者が労災でケガや疾病を負い、労災保険の給付を受けることが多いのは必然と言えます。
ハローワークでは、外国人の方が求職していたり、失業手当(基本手当など)の申請をしていることがあります。雇用保険料を納付しているのですから、要件を満たせば、人種や国籍に関わらず、支給の対象となります。
労働保険には外国人労働者への優遇はなく、特別扱いもありません。
少なくとも労働保険の面からは、外国人であることを理由に差別することはできません。
経営者の皆様には、人種や国籍に関わらず、労働者には公正、平等に接する姿勢が大切です。
LEO社会保険労務士オフィスでは、労働保険をはじめとした各種労務相談を承っております。
お気軽にお問い合わせください。